イジワル外科医の熱愛ロマンス
婚約中もずっと待っててくれた。
頑なに向き合おうとしなかった私を。
美奈ちゃんも、『雫さんを大事にしてたから』と言ってくれたことを思い出し、どうしようもなく胸がきゅんと疼いた。


今の祐と向き合うと決めた。
ドキドキして胸が苦しいからって、真っすぐ顔を見られないまま、デートを終わらせてしまってはいけない。
楽しむどころじゃなかったと、しゅんとする前に、祐にも私といて楽しいと思ってもらいたい。


リアルの恋は、黙っていては続かない。
顔を見て話をしなければ、幸せな結末に辿り着けない。
幸せに続く正解の選択肢は、私が決めて選ばないと。


日を空けずして約束した二度目のデート。
必死なのは隠せないけど、意識して顔を上げ続けた。
祐が繋いでくれた手を握り返し、ぎこちなくてもいいから笑顔を交わした。


祐は、私を気遣ってくれたんだろう。
時々幼い頃の楽しかった思い出話を振って、会話を盛り上げようとしてくれた。
懐かしさに、私の顔も綻ぶ。
祐も楽しそうに笑ってくれて、それを見ている私の胸はきゅんと疼いた。


初恋に似た、淡く穏やかな感覚を、私は確かに取り戻していた。
まだ祐には上手く伝えられないけど、私は自分の心の変化に、ちゃんと気付くことができていた。
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