炭酸アンチヒーロー
「ふたりとも考えたー?」

「おっけーっす!!」

「わわっ、あとちょっと!」



もうすでに、沙頼と佳柄は思いついたみたいだ。私は慌てて答えてから、再度考え込む。

えーっとあとは、炭酸飲料……だっけ?

炭酸かあ……しゅわしゅわで、きらきらしてて、それから夏っぽい。

青空とか、海とか、茶色いグラウンドとか──……。


──ドキン。

そのとき私の心臓が、一際大きく高鳴った。



「(え、うそ、なんで、)」



グラウンドの土の色、高くて青い空、耳に残る軽快な音。

それらと一緒になって自分の脳裏に浮かんだ人物に、自分で驚いた。

……なんで。どうして、今……あの日偶然見た、辻くんの楽しそうな表情なんか。

あの日、グラウンドで野球をしていたときの……彼の、笑顔なんか。



「それじゃあ、結果発表ね!」



呆然としていたところに突然沙頼の声が聞こえて、思わず肩がはねてしまった。

幸い、ふたりには気づかれなかったらしい。沙頼は雑誌に視線を落としながら、パラパラとページをめくる。
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