炭酸アンチヒーロー
「“今あなたの目の前には、オレンジジュース、紅茶、コーヒー牛乳、炭酸飲料があります。あなたの身近にいる人物で、それぞれの飲み物に合うイメージの人を当てはめてください。”……だって!」

「んんー? 飲み物でイメージ?」



すらすらと読み上げた心理テストを聞いて、佳柄が首を捻る。



「イメージ……えっと、オレンジジュースと? 紅茶と?」

「コーヒー牛乳と炭酸ね! それじゃあシンキングタイム!」



私のつぶやきを引き継いだ沙頼の声を合図に、それぞれ考え始めた。


えと、まずオレンジジュースは……佳柄かな。佳柄ってその性格のせいか、明るい色が似合うんだよね。

次に紅茶……は、沙頼かなぁ。どことなくお洒落っぽい雰囲気が。

コーヒー牛乳は……うーん、誰だろ。思いつかないなあ。



「──あ、」

「ん? どしたはすみんー?」

「あ、ううんっ、なんでもない!」



思わず声を漏らしてしまった私の顔を覗き込む佳柄に、慌てて首を振った。

それからこっそり、私は小さなため息をつく。


コーヒー牛乳……前に廊下で金子くんを見かけたとき飲んでたなあ、なんて。

こんな些細なことでだって、どうしたって、私は彼のことを思い出してしまう。
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