間違った恋
「違えよ」
「それならそうと早く言ってよアツシ」
「だから違えって」
デスクで書類に目を通している若のすぐ側に近寄った遥さんは薄ピンクのカバンから少し大きな包みを出した。
「これ…」
照れ臭そうに顔を髪で隠した遥さんは顔が真っ赤になっていた。
「ああ」
一言言って受け取ったお弁当。
でもどこか若は嬉しそうだった。
「遥さんと若は婚約してんだよ」
コソッと教えてくれた藤間。
ああ、だからあんなに猛アタックしてるんだね遥さん。
「あ、もうこんな時間!わたし帰るね」
腕にはめてあった銀色の時計を見て忙しなくバタバタと帰っていくところを若は自ら送ると言って2人で暗い闇に消えて行った。
そんな姿を羨ましいとさえ思ってしまった私はきっと愛が足りてない。
母さんとはあまり生活リズムが合わないし、
父親は記憶にない。
5歳くらいまでは一緒に生活していたらしいが母さんとの喧嘩が絶えないせいで離婚したって聞いた。
今となってはそれが本当にだったか本当じゃなかったかなんてどうでも良いけど。
「……ちゃ……さや…ちゃ…」
羨ましいなんて…
ふっ、笑っちゃうよね。
「沙耶ちゃん」
「あ、はい」
「ずっと呼んでたんだけど」
疲れた?と聞いてくる遊佐さんに首を横に振った。
「今日はこれくらいにしとこう。牧生、沙耶ちゃん送って行ってくれる?」
え!
それはちょっと…
「チッ…わかった」
待って今舌打ちしたよね?
「いや、私1人で帰れ」
「よろしくー。じゃまた明日ねー」
「だから私」
「お疲れ様ー」
「………」
ダメだこりゃあ。