たった一度のモテ期なら。

「それって、好きってこと?」

「お前だってわかりにくいだろ。俺のこと避けてたのに上書きしてとか何だって眠れないほど考えたんだよ。単に非常事態で口走っただけとかありそうだし、平気でコバの話またしてくるし。このまま帰したら絶対またなかったことにされると思って焦った」

「私は、西山が好きなの。最初にキスされたとき、気づいちゃったの」

「先に言えよ……」

「ごめんて、間違ったって言った」

「言ったな。言ったよ。あの時は確かに」

黙ってしまった。責めたりしないほうがよかったのかな、怒っちゃった?

好きって無理に言わせようとしたからかな。「他の奴に取られたくない」なんて言ってくれてちょっと欲を出しちゃったの。

私のことは好きってほどではないのかもしれない。でもそれでもいいから。

「あのね」

言おうとした言葉は強引に引っ張られたせいで止まり、続いたキスでどこかに行ってしまった。

そのままベッドの中でぎゅっと強く腕に抱きしめられた。「ごめんな」という言葉になにがだろうと思った瞬間に続けて「好きだよ、俺と付き合って」と耳元で小さな声がする。

照れてるんだ、たぶん。ほんとにもう、この人は変なところでかわいい。

「返事は?」

「はい、よろしくお願いします」

「じゃ、もう1回するからな」

照れ隠しであろう宣言はかわいいくせに力強くて、やっぱりちょっとかっこよかった。

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