たった一度のモテ期なら。
「会社では付き合うこと隠したほうがいい?」
帰る前に聞いておかなくちゃと思った当然の問いに対して、西山は忘れ物がないか確認する手を止めて深く考え込んでいる。
「あのね、綾香と原ちゃんにだけは言っていいよね」
「なんで原ちゃん?」
「相談に乗ってもらったというか、そういうことがあって」
「原に?俺のこと?」
「成り行きでというか、それで原ちゃんも応援してくれて」
聞きながらだんだん眉をひそめる西山は、どういう心境なんだろう。同期内でペラペラしゃべっちゃってることをとがめられてる?
「あー、原には俺から言う。影森からっていうのはちょっと」
「そう? でも実はお互いに頑張ろうねって話になってるの」
「お互い? 」
何言ってんだ?って顔に書いてある。知らないのか、仲良いのにそういう話しないのかな。
「絶対内緒にしてくれる? 原ちゃんね、綾香のことを好きなんだって」
「いや。それはない、と思う」
即答だ。確かに私もあの2人はそういう感じじゃないと思ってたけど。
「でしょ? 私も全然気づかなかったの。そうか、西山にでも言ってないんだね。ごめん、知らないふりして?」
「勘違いじゃないの」
「ううん。応援し合うことにしたんだもん。原ちゃんってさ、優しいし力持ちだし意外と紳士だし、見る目を変えたらかっこいいかもしれなくない?」
そう思って見ると、綾香の彼氏としてお似合いではないかと最近ほんとに思ってる。