寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「申し訳ないついでに悪いんだが」
その人が体勢を立て直しながら立ち上がったので、ビクッとして肩を震わせながら反射的に私も立ち上がる。
そこで身長百六十センチの私が見上げるくらい、彼の背が高いことに気がついた。
「シャワーを借りたい。さっぱりしないと気持ちが悪いんだ」
「え……?」
「シャワー。借りられないか」
強気に言われ、嫌ですと断れない。
渋々とはいえ「こちらです……」とバスルームへ案内してしまった。
「サンキュ」
彼が涼やかな微笑みでお礼を言う。
……私、いったいなにをしているんだろう。
見ず知らずの男の人を部屋にひと晩置いた上、シャワーまで浴びさせるなんて……。
――そうだ。お湯が出ないんだ。
肝心なことを思い出し、慌ててドア越しに声を荒げる。
「あの、お湯が出ないんです!」