寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「そんな男でも告白されて嬉しいか」


全然嬉しくないと言ったら嘘になるから、そう聞かれると困ってしまう。
風見さんはカウンターを回り込んで私の前へと立った。


「今朝、言っただろう? 茜ははっきり意思表示をしなければダメだと。俺が通りかかったからよかったが、さっきの調子だと、あのままあの男に連れ去られてもおかしくなかったんだぞ」

「はい、わかっています」


驚いてしまって反応は遅れたけれど、きちんと断ることはできたはず。
ところがそれでも風見さんは納得できないようで、「いいや、わかってない」と苦虫を噛み潰したような顔をする。


「茜は俺の恋人だという自覚が足りないようだな」


それもまた答えに困る質問だった。
私たちはもともとお試しの恋人。
お互いの心が繋がっていないせいか、ある一線から踏み込めない。

多分、すべてを委ねる勇気が私にはないのだろう。
本気で好きになってはいけないとブレーキをかけて、風見さんと付き合っている事実は、まるで他人事のような感覚なのだ。

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