寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「ありがとうございます。こんなことまでしていただいて」
「当然だろ。一日遅れたのが癪なくらいだ」
理玖さんはこれまでお付き合いしてきた女性には、きっとこうしてゴージャスな誕生日プレゼントをしてあげてきたのだろう。
あまりの豪華さになにからしたらいいのかわからない。
「夕食の前に風呂でも入るか」
ぼんやりと立ち尽くしていると、理玖さんが窓の向こうを指差した。
その先には露天風呂がある。
「そうですね。それじゃ理玖さんからお先にどうぞ」
そう勧めたものの「茜から入れ」と言われ、遠慮なくそうさせてもらうことにした。
岩づくりの露天は、大人三人が足を伸ばしてもゆったりと入れるほど大きい。
白濁したお湯に浸かると、心地良さから自然と笑みがこぼれてしまう。
理玖さんのサプライズは、私の心を浮つかせていた。
こんなに素敵なところに来たことはない。
遠くの山には雪が薄っすらと積もり、渓谷からは水のせせらぎが聞こえてくる。