寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
渓谷にせり出すようにして部屋付きの露天風呂があり、大きな窓に面した畳部屋のほかにクラシカルなベッドルームがあるスイートタイプだ。
「一日遅れたが誕生日プレゼントだ」
「……え?」
どこか得意そうな顔の理玖さんの前で、私はポカンと口を開けて固まってしまった。
彼の言ったことがにわかには信じられなくて、自分の耳を疑う。
私の……誕生日プレゼント……?
思いも寄らないことで、嬉しさが遅れて込み上げる。
「気に入らないか?」
「とんでもないです! ……でもおいしいケーキをお願いしていたから」
まさか、こんなに素敵なプレゼントをもらえるとは思いもしなかった。
「ケーキで済ませられるわけがないだろ」
理玖さんは鼻をフフンと鳴らし、渓谷側の大きな窓を開け放った。
冷たくて心地いい風が入ってくる。