寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
素敵な人は確かにいた。でも、懸命に手を伸ばしても届かない高嶺の花だ。
人知れず小さくため息を吐いたところで、不意に肩先に優しい重みを感じた。
驚きに小さく息を吸い込み、横から感じた人の気配へと視線を移す。
「――えっ」
そこにいた人物に自分の目を疑ってしまった。
「高校時代は茜がお世話になったそうですね」
理玖さんだったのだ。
光沢のあるライトグレーのスーツはいつも以上にドレッシーで、赤い水玉のポケットチーフを胸元から覗かせている。
少し癖のある髪は整髪料で艶めいていた。
「……どうしたんですか!?」
エイミーさんは?
どうして理玖さんがここにいるの?
彼がここにいることの現実が理解できず頭の中がパニックになる。
「ドライブがてらにちょっと」