寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「誰がそうだと言った」

「……違うんですか?」


理玖さんの眼差しは私が怖気づいてしまうくらいに真っ直ぐだった。


「エイミーは、向こうにいたときにお世話になった弁護士の娘さんだ。どういうわけか俺のことを気に入ってくれていて、何度か食事をしたことはある。だが、それだけだ」


それじゃ、彼女は嘘を吐いていたの?
アメリカにいた頃の理玖さんを知っている従業員が、エイミーさんは恋人だと言っていたと、沙智さんから聞いたのはなんだったの?


「思い込みの激しい女性で、あちらでも俺の恋人だと触れ回っていたんだ」

「……あのキスは?」


エイミーさんは社長室に入って来るなり、理玖さんにそれが当たり前のように口づけた。


「あんなの挨拶のうちだ。茜は知っているはずだぞ。本当のキスはそんなものじゃないと」

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