寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「クライアントのお嬢様との結婚話だそうです」
座っている理玖さんが私を見上げる。
すぐに笑い飛ばしてくれることを期待したのに、理玖さんはじっと私を見つめたままだ。
「……本当なんですか?」
今にも力が抜けそうになる。
理玖さんは立ち上がり、私の手を取った。優しい笑みが目尻に浮かぶ。
「心配するな」
「……噂話じゃないってことなんですね」
「そんな話はもらったが断った」
理玖さんがそっと私を引き寄せる。
「それで大丈夫なんですか?」
「もちろん大丈夫だ」
理玖さんの心強い言葉を聞いて、気持ちが楽になる。
「さぁ仕事だ」
理玖さんは私の背中をトンと軽く叩き、私を引き離した。