寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「クライアントのお嬢様との結婚話だそうです」


座っている理玖さんが私を見上げる。
すぐに笑い飛ばしてくれることを期待したのに、理玖さんはじっと私を見つめたままだ。


「……本当なんですか?」


今にも力が抜けそうになる。
理玖さんは立ち上がり、私の手を取った。優しい笑みが目尻に浮かぶ。


「心配するな」

「……噂話じゃないってことなんですね」

「そんな話はもらったが断った」


理玖さんがそっと私を引き寄せる。


「それで大丈夫なんですか?」

「もちろん大丈夫だ」


理玖さんの心強い言葉を聞いて、気持ちが楽になる。


「さぁ仕事だ」


理玖さんは私の背中をトンと軽く叩き、私を引き離した。

< 245 / 318 >

この作品をシェア

pagetop