寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「風見くん、一緒に食事でもどうかね。今夜は娘も車で待たせているんだ」

「いえ、ですからその件は、何度も申し上げておりますようにお断りしたはずです」

「そう固いことを言わずに。いい話も持ってきているんだ。きっと風見くんも気に入るはずだ」


ものすごい押しの強さだ。
足立社長は理玖さんの肩を抱き、あれよあれよと言う間に社長室出入口へと引っ張って行く。

私の前を通り過ぎていくときに理玖さんは私に向かって軽く頷いた。
きっと心配するなということなんだろう。
ただ、その目は戸惑いに揺れていた。

嵐のごとく理玖さんを巻き込み、足立社長が社長室を出て行くと一気に静寂が訪れる。
私がすぐに動き出せずにデスクの前で突っ立っていると、その静寂を破ったのは琢磨さんの登場だった。


「茜ちゃん、さっき出て行ったのってミヤコの足立社長じゃなかったか?」

「……はい、そうです。……琢磨さん、社長に結婚の話が持ち上がっているそうですが、それは足立社長の娘さんがお相手ですか?」


琢磨さんの目に閃光が走る。

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