寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「茜ちゃんの耳にも入ったのか」


琢磨さんはデスクにもたれるようにして腕を組んだ。


「今日の朝、ロッカールームで社内の人から。お相手のことは知らないみたいでしたが」

「兄貴からは?」

「社長は、その話はもう済んだことだからと。お相手のことまでは教えてもらえませんでした。でも今、お嬢さんを下に待たせてあると足立社長がおっしゃっていて……」


琢磨さんが深く長いため息を吐く。


「茜ちゃん、これは相当手強いぞ」


琢磨さんにいつもの軽い調子がないものだから、小さかったはずの懸案材料がみるみるうちに大きくなっていく。
『心配するなって』とでも笑い飛ばしてくれれば、まだ楽観視できたのに。


「足立社長には後継者に長男がいて、長女を兄貴と結婚させれば、ミヤコはますます安泰だと考えたんだろう」


次期社長を自分の息子に。

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