寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

その夜、私は帰りに買ってきた雑誌をベッドの上で広げた。沙智さんから聞いた月間ビジネスソリューションだ。
彼女には『見ない』と答えたものの、どうしたって気になる。

少し前に発行されたものだからかなかなか見つからず、しまいにはムキになって次から次へと書店を巡ることになってしまった。
五軒目でようやくそれを見つけたときには、やっと見つけた宝物のような気にすらなった。

しかし宝物じゃなく、私にとってはパンドラの箱だ。
その場で見るのが怖くて、書店員にテープを何重にも貼ってもらい、厳重に封をして持ち帰ったそれを今まさにめくっていく。

そして私は、中頃までめくったところで指を止めた。見開きの右側半分にアップで写る足立社長の顔を見つけたのだ。
その左側にはこれまでの輝かしい経歴やミヤコのことが書かれていて、ざっと読んでみたところ、以前ミヤコのオフィスに行ったときに理玖さんと話していたアメリカ在住当時のことも載っていた。

ページをもう一枚めくると、今度は家族写真が私の目に大きく入った。
足立社長の両隣に奥様と息子さん、そしてその隣には話題の娘さんがにこやかに写っていた。
写真のコメントには、名前が美咲とある。
片方の肩で緩くまとめた長い髪は胸元でカールし、色の白さが際立つ清楚な美人で、綺麗だと社内で噂されるのも頷けた。

私では敵わない。見なければよかったと瞬間的に思った。

そっと閉じた雑誌をベッドサイドに置き、電気を落として布団を頭から被る。
いっそのこと存在を消してしまいたい気持ちで強く目を瞑った。

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