寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

それから二週間が何事もなく過ぎていった。
社内での理玖さんの結婚話は未だ衰えるところを知らず、どこにいてもその話題が耳に入るほど新鮮な情報だった。

ただ、理玖さんにいたってはどこにも変わった様子がなく、そんな話など最初からなかったような感じだ。
そういう理玖さんを近くで見ていた私は、もしかしたら縁談はなくなったのかもしれないと思い始めるようになっていた。

きっと足立社長は諦めてくれたのだろう。
理玖さんとの生活に変化がないことも、私に少なからず自信をつけさせていた。

三月も中盤に差しかかり、日差しにも少しずつ温もりを感じる。
きっとこのまま穏やかに春を迎えられる。
そう思っていた最中だった。

理玖さんが出張で不在の社内に、別の噂が飛び交い始めたのだ。
私がそれを聞かされたのは、沙智さんと一緒にいた休憩室でのことだった。


「会社が危ない」


確かにそう聞こえた。
ふたりで顔を見合わせ、近くに座っていた男性社員に沙智さんが声をかける。


「会社が危ないって、なんの話?」

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