寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
大企業の社長の秘書だけじゃなく、恋人だなんて私に務まるはずがない。
容姿も中身も、生まれも育ちも、全てが釣り合わないから。
風見さんは眉をぴくりとさせ、「茜がやめたいと言うなら、それでいいだろう」と頷いた。
「……そういうことなら、よろしくお願いします」
姿勢を正して頭を下げる。
自分に少しでも自信が持てるようになるなら、今までの自分から変われるのなら。
風見さんは満足したように「よろしく」と微笑んだ。
しばらくすると車が停車し、後部座席のドアを寺内さんが開けた。
風見さんに続いて降りると、そこは大きなデパート【クラッセン】の前だった。
ブランド物が多いという印象から、万年金欠の私には縁のないところ。
大学生のときに就活で着るスーツを探しに入ったときに、懐事情と合わなくてそそくさと出てきた過去がある。
そのときに別の店で買ったスーツが、今着ているものだ。
「行くぞ」
先に歩きだした風見さんの背中を追う。