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「未来〜、もうホームルーム終わってるよ〜?」


「写真撮りに行こうよ、写真。

校内歩き回って、いろんなところで写真撮ろ?」



ホームルームが終わってからずっと 自分の席で ぼーっとしている私に声をかけてくれたのは いつメンの2人。


「うん!行こ〜!」


カバンを置いたままに教室を出た。


別館の体育館やグラウンド、図書館に思い出深い渡り廊下。


一箇所ずつ、思い出話をしながら 目の前の風景を写真に収めていき 最後の場所に選んだのは校門。



「もうここを通ることもないんだね。」



「3年間、本当に早かったよね。」



「高3なんて 12月で学校終わったし余計にね。」



「もっと一緒にいたかったなあ。」



そんな会話を皮切りに涙が目に滲む。





「ちょっと、未来?泣いてるの?」



少し泣いただけで心配してくれる友達がいるなんて、私 幸せ者だなぁ。



「なんか、今更寂しくなってきちゃって……」



「泣かないでよ、まだ春休み中はいっぱい予定立ててるんだから。

何回でも会えるよ。」



「そうだよ、制服ディズニーもする約束じゃん!」



"うん、そうだね" と何度も頷いた。


セルカ棒とカメラアプリを駆使して、最高の一枚を演出する。



「よし、じゃあご飯食べに行こっか。」



校門を出て数歩で 私だけ鞄を持っていない事実に気がついた。



「ごめん!直ぐに鞄取ってくるから ちょっと待ってて!」


走って教室に戻る。

どうして、皆が鞄を持っていることに気づかずに写真撮りにいっちゃったんだろう。


ホームルームが終わってから もうすぐ1時間。


ついさっきまで賑わっていたと思われた校舎内はすっかり寂しくなっている。


教室に入る前に一度足を止める。


息を整えて、前髪を整えてから 意を決して教室に入る。


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