きっと、ずっと、恋だった。




もちろん、本当は買うものなんてないけれど。


ただ少しだけ、もう少しだけ君の隣を歩きたかっただけなんだけれど。




心なしかさっきよりゆっくりになった秋樹の歩幅と、私のそれ。



…あと、10センチ。



手を伸ばせば君に届く。

手を伸ばして、君に触れたくて。




だけど夕焼けが照らす影に、私の手が少し君に伸びたのが見えて。



それがなんだか急に恥ずかしくなって、手を引いた。


…秋樹に、ばれていませんように。




たった10センチ、手を伸ばす勇気がない。

たった2文字、伝える勇気がない。




だけどふたつの影は並んで、オレンジ色のなかに浮かんでいる。




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