きっと、ずっと、恋だった。




「それ、俺がやってもいい?」



急に後ろからかけられた声に、驚いて振り向く。





「お、アッキーじゃん。やってくれるの?」

「ああ」

「じゃあ、どっちか頼むわ。
ごめんな、あとでアイスでも奢るから!」




試合の時間が近いからと、謝りながら走って去って行ってしまった。


秋樹とふたり残されて、高身長の横顔を見上げる。

サッカーをしたからか、朝より少しだけ乱れてくしゃっとした髪が、余計格好良く見えるのは私のひいき目なんだろうか。





「審判、私やるよ?」



「いいから芹奈はご飯食べて来なよ」


「え…」




私の手から、ブザーを取って。





「全然食えてないだろ」





優しくそんなこと言うから、不意に泣きそうになった。



何でだろう、全然悲しくないのに。


私のこと見ててくれたって、心配してくれたって、それだけで。


それだけっていうか、それは奇跡みたいに嬉しいことなんだけれど。





< 56 / 240 >

この作品をシェア

pagetop