きっと、ずっと、恋だった。
「それ、俺がやってもいい?」
急に後ろからかけられた声に、驚いて振り向く。
「お、アッキーじゃん。やってくれるの?」
「ああ」
「じゃあ、どっちか頼むわ。
ごめんな、あとでアイスでも奢るから!」
試合の時間が近いからと、謝りながら走って去って行ってしまった。
秋樹とふたり残されて、高身長の横顔を見上げる。
サッカーをしたからか、朝より少しだけ乱れてくしゃっとした髪が、余計格好良く見えるのは私のひいき目なんだろうか。
「審判、私やるよ?」
「いいから芹奈はご飯食べて来なよ」
「え…」
私の手から、ブザーを取って。
「全然食えてないだろ」
優しくそんなこと言うから、不意に泣きそうになった。
何でだろう、全然悲しくないのに。
私のこと見ててくれたって、心配してくれたって、それだけで。
それだけっていうか、それは奇跡みたいに嬉しいことなんだけれど。