【超短編 22】 真説・七夕の由来
 早速織り姫は、天の川の方に向かいました。
 次に神様は彦星の牛を操りました。
 いつもは大人しい牛が急に走り出したことに驚いた彦星は、慌てて追いかけました。
 やっとの思いで牛を捕まえたときには、彦星は天の川のほとりまで来ていました。
「一体どうしたというんだ」
 息を切らせながら彦星はもといた場所に戻ろうとすると、天の川を渡ってくる織り姫を見つけました。
 織り姫もまた彦星を見つけました。
 そして2人は、互いに一目で恋に落ちました。
 初めて高鳴る胸に戸惑いながらも、織り姫は彦星に声をかけました。
「私は機を織っている者です。良かったらあなたの服を作らせていただけませんか?」
 断る理由もない彦星はそれを受けました。
 後日、彦星の服と神様の服を作り上げた織り姫は、約束の日に天の川に行きました。
 彦星に服を渡すと2人はただただ黙って、その場を動きませんでした。
(これでもう彦星様にお会いできなくなる)
 彦星もまた同じ事を考えていました。
 今まで外の世界を知らなかった2人にこの後どうすればいいのかという答えを導き出すことは出来ませんでした。
 しばらくして、どちらからでもなく2人は元の仕事場に戻っていきました。

それから2人は常に上の空でした。
 織り姫は神様の服の袖を四つ作り、彦星は牛にエサを1日4回あげました。
 見るに見かねた神様は織り姫に悩みを聞きました。
「いいえ、私は何も悩んでおりません」
 恋を恥じらう織り姫は、神様にさえそれをうちあけようとはしませんでした。
 織り姫の口から相談をされなくては、無理に2人を再び引き合わせることはできません。
 そこで神様は、またあることを思いつきました。
 
「織り姫や。もし今後そなたに何か願いが出来たのなら、その機織り機の傍にある笹の木に言いなさい。そうすれば、やがてその笹の木がそなたの願いを叶えてくれるだろう」
 それから織り姫は、毎日のように笹の木に再び彦星と出会うことを願いました。
 日が経つにつれ笹の木は、織り姫の想いの丈を現すようにグングンと伸びていきました。
 伸びに伸びた笹の木はやがて先が見えなくなるほどになりました。

 
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