復讐劇は苦い恋の味
どういうつもりで私とお見合いしたいなんて思ったのだろうか。

あれだけのことをしておいて、まだ私をいじめ足りないの?

当時のトラウマが蘇り、膝の上で拳をギュッと握りしめてしまう。

なにが『初めまして』よ。違うでしょ? 『お久しぶりです』じゃない。それともわざと初対面を演じているの?

彼、君嶋朝陽(きみしま あさひ)の真意が読めなくて、何度も様子を窺ってしまう。

それとも別人? ……ううん、十五年経っているけれど、間違えるはずがない。彼のことだけは絶対に。

「美空ちゃん、こちら君嶋朝陽さん」

ひとり思いを巡らせていると、叔母さんに紹介された彼は丁寧に頭を下げた。


「本日はお会いしてくださり、本当にありがとうございます。……正直、ダメ元でお願いしたので、松本さんからお会いしてくださると聞いて嬉しくて」

そう言ってハニカム姿に、焦りを覚える。

本気でそんなこと言っているの?

「ふふふ、美空ちゃんには話していなかったけど君嶋さん、美空ちゃんに五年間ずっと声を掛けられずにいたのよ?」

「――え」
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