復讐劇は苦い恋の味
五年間? どういうこと?

思わず叔母さんを見ると、途端に君嶋くんは慌てた声を上げた。

「松本さん! それは言わない約束ですよ」


「あら、いいじゃない本当のことだもの。美空ちゃんが勤めている病院に君嶋さん、副社長に就くまでの間、営業として訪れていたのよ。そこで美空ちゃんに一目惚れしてしまったんですって」

嬉しそうに声を弾ませ話す叔母さんと、恥ずかしそうにそれを聞いている君嶋くんに、ある思いがよぎった。

もしかして君嶋くん、私のことを忘れているのかもしれないと。


離婚を機に苗字が変わったし、美空なんて名前の人なんてたくさんいるし。なにより彼は私の下の名前など憶えていないだろう。

卒業アルバムにも私は載っていないだろうし、なにより当時と今では別人のように違う。

私だって気づかないのもあり得る。――でもそれにしたってあんまりだ。

トラウマになるほど辛い思いをさせられた相手に、一目惚れされるとか。冗談にしたって笑えない。

「失礼いたします。お料理お運びさせていただいても、よろしいでしょうか?」

「はい、お願いします」
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