15歳、今この瞬間を
「あ、そうか。じゃあ夢希、少し散歩してみるか?」

「え?あたしが?いいの?」

「うん。これ持って歩くだけだけど(笑)」

ロウから渡されたリードを持つ手が、楽しく緊張していた。

その緊張が伝わったのか、心なしか犬も緊張しているように見えた。


「ありがとう!楽しかった」

時間にして数分、あたしの犬の散歩はあたしの住むマンションの前で終わった。

「夢希」

リードをロウに返したところで、名前を呼ばれ顔を上げた。

「ホント変わったよな。素直にお礼も言えなかったもんな、夢希って」

「…ほっといてよ」

なに、急にからかわないで。

「からかってるんじゃないからな。元の、殻にこもる前の夢希に戻って良かった、って話だからな」

「……」

あたしのことをずっと前から知っているみたいなロウの言葉に、どこまでもお見通しなんだなと思うあたしだった。


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