15歳、今この瞬間を
幼稚園の頃に1度、小学生の頃に3度、今回で5度目の転校になる。

"早くみんなと仲良くなれるように頑張ります"
"わからないことばかりなので、色々教えてください"

そんな、ありきたりのことばかり言ってきた。

どうせまたお父さんの転勤で引っ越すことになるんだから、そんな言葉は必要ない。

あたしは、小さく深呼吸をした。

「…よろしくお願いします」

クラスメイトの顔も見ずに、あたしはぺこりと頭だけを動かした。

あたしは、自分の夢希(ゆき)という名前が大きらい。

ひらがなだったら、きらいになることもなかったかもしれない。

夢と希望で夢希だなんて笑っちゃう、転校ばっかで友達もいないあたしに、どうやって夢や希望を持てというんだ。

「井上さん、もう少し…なんかないの?」

「…」

だって、名前もどこから来たのかも、さっき先生が言ったじゃん。

「大阪から来ました、井上夢希です」

だいたい大阪には2年くらいしかいなかったのに、出身ですみたいに言わなきゃいけないのも不快だ。

大阪弁もつかえないのに。


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