少年Sの恋路の行方は
既に夕焼け色に染まった図書室にはもう他の生徒はいない。
おかげで気兼ねなく、志藤君と本について語らうことができた。
そして志藤君は去り際、いつものようにしおりボックスへと手を伸ばす。
けれど今日はその寸前にもう一度カウンターに目線を戻した。
「ねぇ、それって全部、鈴木さんが作った新しいしおり?」
「月曜日は私、ひとりの担当だからね」
「うん、知ってる」
思わぬ即答に軽く目を瞠る。
志藤君はなぜかそのままボックスから離れ、カウンターに戻ってきた。
なんだろう、と思っていると、その指が真新しいしおりに向く。
「ねぇ、今日はこっちから持っていってもいいかな?」
「えっ」
予想していなかった提案に素っ頓狂な声が出る。
指された先にはずらりと並んだ私の新作。
いや、もちろん悪いことはないのだが。
そのしおりたちの上には、当然ながら私の文字が連ねてある。
どうせ無記名だからと好き勝手に書いたが、志藤君がそこから取るということは自然とそれらが私の文だとわかるというわけだ。
無性に恥ずかしく思いながらも、断わることはできずにおずおずと頷いた。
それに志藤君は嬉しそうに笑い、腰をかがめてしおりに視線を滑らせていく。
ただしおりを見ているだけだとわかっているのに、あまりにも志藤君の視線が真剣なせいか、まるで私自身が凝視されているようで落ち着かない。
しばらくして決まったのか、志藤君は3枚ほど選んで帰っていった。
「大切に使うから」と、素敵な笑顔を残すことも忘れずに。
「絶対に心臓に悪いよ、あの人……!」
