少年Sの恋路の行方は
その腕にはこれから借りる数冊の本。
相変わらずの読書家だなぁ、と感心する。
「貸し出しと返却、お願いできるかな」
「うん。図書カードを出して下さい」
いつもの事務口調で言うと、見慣れたカードが手渡された。
返却の本は一旦カウンターの端に置いて、後で処理することにする。
志藤君はとても早いサイクルで本を借りていく。
少なくとも私が受付を担当する日には必ずと言って良いほど、何かを借りていく。
おかげで、志藤君のカードナンバーが空で言えるほどになってしまった。
「志藤君、この作者の本が好きなの?」
バーコードを読み取るために受け取った本は見慣れた表紙だった。
私も先週まで読んでいたものだ。
思い返せば志藤君はよくこの作者の本を借りていた気がする。
私も好きな作者だからつい興奮して聞いてしまった。
それに志藤君は少し驚いた顔をした。
「ほら、よくこの作者の本借りてるから」
「気付いてたの?」
どこか嬉しそうに微笑む志藤君。
本の好みが合う人に出会うのはやはり嬉しいものなのだ。
同じクラスといっても、教室では挨拶を交わす程度の仲だったけれど、これからはもっと話しかけてみようと密かに決心する。