愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「…守る、ねぇ……」
俺は冷たくいい放ち、今までの会話を聞きながらあるモヤモヤしてた謎が何となく一点に繋がった気がした。
それが今回の事件と大きく関係していることを踏まえ、目の前の男を強く見定めて釘をさす。
「別にあんたが梨央のことをどう思おうが勝手だ。過去の思いに執着し浸るのも自由。だがその思いが強すぎて逆に梨央を窮地に追い込むマネだけはやめてもらいたい」
「えっ?」
「あんたの気持ちはよく分かった。けどな、それをよく思ってない人間が俺以外に他にもいるとしたらあんたはどうする?」
俺は意味深な言葉を残し、コートのポケットからある1枚の紙を取り出した。
梨央には内緒にしていたが、俺は今回の事件である手掛かりを見つけていた。
それは脅迫文のようなもので、以前ここの家のポストに入っていたものだ。
梨央に報告するべきか悩んだが、結局俺は考えた末やめた。
もう少し俺の中で詳しく調べたいという思いもあったし、その内容から彼女の心をこれ以上乱したくないという気持ちが強かったからだ。
「あんたはこれを見てまださっきと同じことが言えるのか」
声を殺し、その内容を見せると目の前の顔色が変わる。
きっと勘の鋭い男だ。この文面を見ればある程度今回の出来事に予測がつくのかもしれない。
「これがポストの中に……?」
「唐突に聞かせてもらうがあんたは離婚の際、ちゃんと話し合い、お互いが納得した上での結論だったんだよな?」
その問いかけに若干の戸惑いを見せられたものの、「…ああ……」と弱い頷きを返される。
「梨央にはこのことを……」
「まだ伝えてはない。今後どうするかはこれからの相手の出方次第だ。俺もその時に改めて考えさせてもらうつもりだよ」