愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

「あ、の…、それってつまり……」

「俺の側にいろよ」


全身が震えるような驚きを私はこの時初めて知った。

目を見開き、一生懸命何か言葉にしなきゃと思うのに何も思い浮かばない。

情けないほど何も言葉が出てこないのに、彼はそんな私をやすやすと追い詰め、悪戯に嬉しい言葉をくれる。


「仕事から帰って来てお前の笑顔に迎えられるのも悪くない。俺の為に毎日美味しいごご飯作ってくれるんだろ?なぁ梨央」

「……っ……」


返事の変わりに大粒の涙が零れ落ちた。

右目からポロリ。そして左からもポロリ。

だってこれって…

ただただ信じられない気持ちで唇を震わせると、コウさんの指先がそっと目尻に触れていく。


「…たくっ…。帰りたくないってごねるくせに、いざ帰るなって言っても泣くのかよ」

「…だっ、て……」


こんなのは反則だ。

泣かせようとしてるのはそっちだもん。

こんなことされて泣くなっていう方がおかしい話しでしょ?感情をコントロールできる方が凄いと思う。
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