愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「でもまぁ、そうだな。そんなに此処にいたいならずっといればいい。明日も明後日もその次も、帰りたくないならこのまま一緒にいればいいんじゃね?」
ぽとり、手の平に何か金属製なものが落とされた。
反射的に視線を落とすと、そこにはシルバーにコーティングされた見慣れた鍵が。
「そういやまだ渡してなかったよな?うちの鍵。これから必要になるからやるよ」
そう言ってまるで飴でも渡されるような感覚で合鍵を私の手の上に乗せてきたコウさんに「えっ…」と、分かりやすく思考が停止する。
「帰りたくないならずっと此処にいればいい。ただし…、この鍵を受け取ったら最後、お前の帰って来る家は今日から此処だ。この先ずっとここがお前の家だと思え」
「………」
まるで他人事のような感覚だった。
言われた内容は分かるのに、それをうまく呑み込めず、頭の中で理解することができない。
ドラマのワンシーンのようにフリーズし、目の前のコウさんを凝視する。
「言っとくがそれを返却すのは今この瞬間だけだ。それ以外は受け付けない。さぁどうする?よく考えろ」
ーーーゴクリ、息を飲む。
もう一度落とされた鍵を一点に見つめたあと、信じられない気持ちで再びコウさんを見た。