「おはよう、起きなかったらどうしようかと思ったよ」

彼は私に水を手渡した。ありがたく受け取り、一口頂く。

「ごめんね、連れ込んじゃった。」

水を噴き出しそうになったのをどうにか堪え、彼の顔を見る。

彼はふざけてそんなことを言うが、今自分の状況が分からないほど馬鹿ではない。彼の事だ。店に私を捨て置くこともできず、こうしてここへ運んでくれたのだろう。

「わかってますよ。たくさん迷惑かけちゃって、お恥ずかしいです。ごめんなさい。」

「そういうの照れちゃうから、どこに連れ込んでるんだと怒ってくれた方がいいな。」

彼は頭をポリポリと掻きながら私の居るベッドの横に座った。

怒るわけがない。むしろ目が覚めて貴方がいることに喜ぶのを必死に隠しているというのに。

「とにかく、戻したりしちゃったんだよね?気分悪くない?洗面台使いなよ。一応お風呂も湧いてるけど、酔った時って入らない方がいいんだったかな。」

たしか彼のいう通り酔った時は入らない方が良かった気がする。だが戻した時に変な汗をかいたから体がべたべたして気持ち悪い。シャワーを浴びさせてもらおう。

「せっかくなんで失礼します。」


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