赤い刻印 - Secret Love -
…このままではいけない。
そう思った私はHRが終わってから化学室に足を運ぶことにした。


***


「まだいたのか?」

私の姿に気づいて振り返った先生。

「うん」
「とっくに帰ったかと思ってた」

そう言って何事もなかったようにまた手を動かし始める。

「また授業の予行練習?」
「今日は化学部のほう」
「そう。見てていい?」
「…ああ」

放課後の化学室は今日も静寂に包まれている。
だから風の音がやけに耳につく。

「矢沢」

長い沈黙の後、最初に口を開いたのは先生だった。
ゆっくりと名前を呼ばれて全身が強張る。

「なに?先生」
< 53 / 238 >

この作品をシェア

pagetop