それは無理です
「姐さんっ!あの…改めてすみませんでした!今は何もないんです。若もオレも男同士はお互い初めてで、たまたま成り行きで…。」

目撃した次の日。

廊下で呼び止められた私。

立ち止まり、綺麗な顔した男を冷ややかな目で眺める。

その辺の女より…私よりも断然綺麗な男。

旦那は男っぽい男前だから、まぁお似合いといえばお似合いよね。

黙ったままの私を恐々と見つめてくる。

本当にこの人ヤクザなの?

こんな弱々しい感じで大丈夫?

『何でここにいるの?ちかはどうしたの?』

ちかは旦那のことね。

天宮誓(あまみやちかい)。

ちなみに私は天宮叶(あまみやかなた)といいます。

「オレ…今日から姐さんの護衛になりました。」

『はぁ?なんで?!あなた、ちかの側近でしょ?誰が決めたの?』

迷惑極まりないわ!

「若ですが、オレも信用を取り戻すには、これが一番だと思ってます。」

『イヤ。』

「…えっ?!」

『だから、イヤ。私、子供できるまでは許すって言ったわよね?それで充分でしょ?なんで私が旦那のセフレとずっと一緒にいないといけないの?』

「ですがっ…!」

『イヤなものはイヤ。じゃあ、あなたは逆の立場だったら、イヤじゃない?なまじ、キスまで見せておいて。私が傷ついてないと思った?確かに親から言われた結婚よ?でも、きちんと好きになれると思ったから、結婚したのよ。』

段々と涙声になって、思わず唇をぎゅっと結ぶ。

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