五感のキオク~記憶の中のアナタの声~
凝視している私に彼は、「見覚え、ある?」と聞いてきた。


見覚え、っていうか。

やっぱりっというか・。



いや、でも。

そう思っても、まさかとそれを打ち消す。



だって、


「……そっか、覚えてない。か」


残念そうに言う、彼に私は、


「……覚え、てる。っていうか、私の記憶違いとか、気のせいとか、浮かんでくるけど。でも、その、それって?」


あぁ、やっぱり私はまだ子供だ。

自分の思ってる事も言いたいこともうまくまとめられないなんて。


彼には大人になった私を見せたいのに。

それどころかあの頃の方が大人ぶっていた分、もっと大人に見えたかもしれないのに。


戸惑う私に彼は頬を緩め、目じりを下げて微笑む。


「よかった、それ何とか聞かれたら俺さ、もう立ち直れないとこだった」


そう子供みたいに言った後、「あのリングだよ」と。
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