五感のキオク~記憶の中のアナタの声~
そこからの彼は饒舌だった。

あの頃は学生の私に大人に見られたくてふるまっていたことも

それでも中身は違うからどうしても声に出てしまっていたことも

本当はお揃いのリングが嬉しくていつも持ち歩いていたことも。


全部全部……



気づけば彼と手を繋いで店を出ていて

そのまま彼の家に向かった。



恋人繋ぎ。

そんなの以前はしたことなかった。

けれど電車の中でもずっとそのままで。



彼の家に着くと電気もつけずにそのまま部屋へと急ぐ。

リビング、ではなくそのままベッドルームへ。


間接照明の小さな明かりだけで、私の名前を呼ぶ。


―――あぁ、この声だ。


彼のこの声だけが私の中に響き渡る。

私の中でどうにも震えて仕方がないのだ。
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