五感のキオク~好みの彼に出会ったら~
「で?この前、あれからどうしたんだよ?」
今までの会話をまるでなかった事にしてそんな風に切り出してきた同僚。
「あれからって?」
わかっているくせにわざと聞いてみた。
随分と底意地の悪いとはわかってる。
「だから、あれだよ、取引先の……」
「あぁ、あの後?」
わざともったいつけるようにやっと思い出したという感じで続ける。
だってわかってしまった。
彼とはそういう関係になったにもかかわらず
夢のような時間だったと自分では思っていたのに。
私は彼そのものなんて全く見ていなかった事。
彼が最後に言った一言で気付かせてくれた。
「別に。」
「別にってなんだよ?そんなの答えになってないだろ?」
別に何だと問う彼の聞き方は正解で。
その言葉で、終わらせると思ってはいない。
苛立つ彼を見ながらもう一度言う。
「別に何ともないよ」
何もないとは言わない。
何もなくはないから。