五感のキオク~好みの彼に出会ったら~
「別に何ともない。そんなの答えになってないだろ?」
「そう?その言葉の通り、だけど?」
彼が苛立っているのはわかる。
けれど、その苛立ちを私に向けるのは間違っている。
だってあなたには彼女がいて……
「なんだよ、それ。おまえっていつもそう。」
いつもってイツのこと?
「いつだっておまえは俺の手からすり抜けていく。俺が本気になんてならないように上手に予防線張りながら」
予防線?そんなの張った覚えない。
大体、彼女がいる人に手を出すつもりなんて……
「彼女がいるって言っても動じないし、好みっぽい男と飲みに行かせても変わりがない。おまえは一体、どんな時に本気になるんだ?」
好みの男と飲みに行かせた?
それってわざと?
「本気になっていい相手なら、本気になるよ。たぶん」
精一杯の反論。
本気になっていい相手なんて…
「おまえが?本気になんの?」
俯いた私の耳に届いたのは戸惑ったような同僚の声。