五感のキオク~好みの彼に出会ったら~


「別に何ともない。そんなの答えになってないだろ?」

「そう?その言葉の通り、だけど?」


彼が苛立っているのはわかる。

けれど、その苛立ちを私に向けるのは間違っている。

だってあなたには彼女がいて……


「なんだよ、それ。おまえっていつもそう。」


いつもってイツのこと?


「いつだっておまえは俺の手からすり抜けていく。俺が本気になんてならないように上手に予防線張りながら」


予防線?そんなの張った覚えない。

大体、彼女がいる人に手を出すつもりなんて……


「彼女がいるって言っても動じないし、好みっぽい男と飲みに行かせても変わりがない。おまえは一体、どんな時に本気になるんだ?」


好みの男と飲みに行かせた?

それってわざと?


「本気になっていい相手なら、本気になるよ。たぶん」


精一杯の反論。

本気になっていい相手なんて…


「おまえが?本気になんの?」


俯いた私の耳に届いたのは戸惑ったような同僚の声。
< 17 / 24 >

この作品をシェア

pagetop