君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「かぐや様、この方は意図的に私にこのようなことをなさったんです。

樫月家の新葉を身に纏う資格などこちらの女性にはありませんわ。」


樫月家のワカバって何だろう?

その疑問を投げ掛ける前に、かぐや様と呼ばれた女性がおっとりとした声で告げた。


「私はあなたを見ていましたよ。

これ以上の説明は必要ありませんね」


柔らかな声だけれど、有無を言わせない言葉に目の前の女性は顔を歪めて立ち去った。


「不愉快な思いをさせてしまって申し訳ございません。お怪我はありませんか?」


私に向き直ってそう告げた彼女は、心配そうに表情を曇らせた。


透き通った肌の小さな顔。切れ長の大きな瞳は濡れたように輝いている。顔を傾けると銀糸を束ねたような髪がさらさらと流れた。


「きれい……本物のかぐや姫みたい」


思わず呟くと、彼女は目を丸くして照れたように笑った。


「お恥ずかしながら本名なんです。青山かぐやと申します」


そう言いながら、華奢な手を伸ばして私の髪の乱れを直してくれた。


「あのっ、私は有坂柚葉です。助けて頂いてありがとうございます。かぐや様」


「様、はお止めください。

あなたは樫月家の次期当主と共に歩まれるお方なんですよ。柚葉様。

その髪飾りは、樫月家当主と、それに連なるお方しか身に付けることのできないものですから。

樫の木の葉を模しているため、樫月家の新葉と呼ばれています」


「この髪飾りにそんな意味が……」

そういえば澪音の胸元にも同じ葉の飾りが揺れていた。そんな重大なものを勝手に身につけさせないでほしい。

バイトの身の私なんかに。
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