君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「ダンサーの仕事が軌道に乗らないのはあなたのその負け犬根性が原因なのではなくて?

私、あのパーティーで澪音と踊っているあなたを見ましたけど、あまりに美しくて言葉を失いましたの。とても仕事が貰えないダンサーには見えませんでしたわ」


「……ありがとうございます」


躍りを誉めて貰えたのは嬉しいけど、何だか複雑になる言葉だ。

負け犬根性……確かに私はいつもいつも、あと少しで届かないことに慣れてしまっている。


「ふっ。こんな言葉で礼を言うなんて、信じられないお人好しね。

そもそも私は、あなたが私に一度も怒らないのが不思議でしょうがないんですけど。

あなたはいつもそうやって、他人に押し退けられたら大人しく道を譲るのかしら」



「え……」



かぐやさんが言っているのは、きっとかぐやさんが澪音に抱きついていた夜のことだ。


あの日私は、「朝まで帰って来ないで」と部屋から閉め出された。あの時の事について、ちゃんとかぐやさんと話したことはなかった。


「それは……確かに傷つきましたけど、澪音から聞いた限り、かぐやさんにも事情があったのは知ってますし……」


「はぁ……お話しにならないわね。

まず、あの場で私に一言も言い返せないのがおかしいのよ。

内心では腹が立っているくせに、澪音の前で可愛い女を演じたいのかしら?」
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