君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
彼女達のはしゃぐ声が少し大きすぎたのか、近くでお酒を飲んでいた男性の舌打ちが聞こえた。


「お客様、申し訳ございませんが、周りのお客様もいらっしゃいますのでもう少しお静かにお話ししていただけますか?」


控え目に声をかけると一旦は静かになったものの、興奮が収まらないのかまたすぐに大きな声になる。もう一度声をかけようとすると、イライラしていた男性が立ち上がって女性客に近づいた。


「うっせぇな、ぎゃーぎゃー喚きやがって」


声と歩き方から、その人はかなり深酒しているようだった。


「わっ怖い……何このオジサン、ウザいんだけど」

「たちの悪い酔っ払いだね、席変えてもらおうか?」


ヒソヒソと話す女の子の態度も余計に怒りを煽って、その男性は彼女達に掴みかかりそうな勢いだ。普段のクロスカフェには落ち着いたお客さんばかりなので、こういう騒ぎは滅多にないんだけど……。


「お客様、落ち着いてください。お席を移動させて頂きますのであちらで……」


「あぁ? マナーがなってねーのはこの客だろうが」


その人が彼女達に近寄ろうとしたので慌てて体を滑り込ませて立ち塞がる。


男性の手から落ちたグラスが砕けた。背後で小さな悲鳴が上がったので、彼女達に怪我が無いか横目で確認する。そろそろオーナーを呼ばないと駄目かも。


「お客様、危ないのでお席にお戻り下さいませ。ただいま新しいお飲み物をお持ちいたしますので」


「失礼な店員だなっ、こいつらに謝らせろよ」


その人は私を突き飛ばそうと振りかぶっていたけれど、背後の女性客を見ていたので反応が遅れてしまった。目の前に拳が飛んできて、怖いと眼をつぶったタイミングで強く体を引かれて腕の中に抱き込まれていた。
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