君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
体のどこも痛くないので目をあけると、澪音が私を庇うように手で男性が殴るのを受け止めていた。


「澪音……!」


「柚葉、怪我はないか?」


「私は平気です……

って、澪音、血が……!」


左手の平に深々とグラスの破片が突き刺さり、どくどくと血が流れている。


駄目。


それだけは絶対に駄目。


澪音の手が傷付くなんてあってはいけない。


私が割れるような悲鳴をあげた頃には、オーナーが男性を取り押さえて事態を収集していた。


「救急車を……早くっ……!」


「いいよ、これくらい大丈夫だし、専属医に連絡するから。それより柚葉に怪我がなくて良かった」


ぽたぽたと流れる血をジャケットで受け止めて、澪音は店のバックヤードに向かいながら平然と電話している。遠くで「あの人喋れたんだ……」という声がした。



「しまった。声を出すまいと思っていても、結局俺は意志が弱いんだよな」


右手でガラスを抜こうとしているので慌てて止める。そんなどうでも良いことを気にしてる場合じゃないのに!


「駄目です!深く刺さったガラスは素人が抜いたら駄目なんですよっ!もう、何でそういうとこ適当なの!?変なこと気にしてないでもっと手を大事にっ……」



「そうか、柚葉は物知りだな。

あ、柚葉にも話しかけるなと言われてたっけ。悪いけど触ったのも話したのも不可抗力だから」



「今そんなこと気にしてる場合じゃないでしょう!

どうしてこんなこと……」
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