君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
それからしばらく時間が過ぎ、今は優雅なランチタイムを過ごしている。


落ち着いた内装の部屋には優しい木漏れ日が入り、目の前には色鮮やかな料理が並んで……

でも、緊張して味が全然分からない。



……




さっき澪音が弥太郎さんを紹介してくれたとき、弥太郎さんは


『初めまして、兄の弥太郎です』


とわざわざ書いて美しく微笑んだ。


神経質そうに見える顔だけに、笑うと和やかになってギャップがある。中身を知っていても、つい見惚れてしまった。


最初に会ったときは一度もそんな顔を見せなかったくせに。そもそも初めましてじゃないし、と口をついて出そうになったとき、弥太郎さんは


『だまれ まいひめ』


と、笑顔のままで唇を動かした。声が出てるんじゃないかと思うくらい、言っている言葉が読み取れた。


弥太郎さんって本当に人が悪い!


悔しいけれど弥太郎さんの威圧感には勝てず、私も「初めまして」と言うしかない。


「自慢の兄さんだ。俺の目標でもあるんだ。

優しくて、話題も豊富で楽しい人だから、柚葉もきっとすぐに打ち解けるよ」


と言った澪音には全く同意できないけど、弥太郎さんが差し出した右手を思いきりつかんで握手を交わした。


そのあとにかぐや姫も続く。彼女は私を見るなり気遣わしげに目を伏せた。

かぐや姫からすれば、澪音の恋人である私の前に、彼の婚約者として現れなければならないのだから気まずいのは当然だ。


そうして、澪音、弥太郎さん、かぐや姫と私の4人でのランチが始まった。
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