君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「待って、澪音。さっきから変ですよ。どうして……」


「柚葉の仕事に不満があるからだ。兄に近づき過ぎたのは恋人役として失態だ。

過失の責任はとってもらう」


「責任……?どうやって……」


「こう」


と言って澪音は私の唇をふさいだ。驚いて体がこわばったけど、柔らかな唇が触れて次第に私の力も抜けてしまう。

澪音はそれを察するように唇を開いて、ゆっくりと舌を絡めた。


「んっ……、ぁ……」


強引な態度とは裏腹にあくまでも優しい、ためらいがちなキスで、唇が甘く溶けていくのが分かる。キスなのに、焦らされているかのような変な感じがする。


「柚葉、応えて」


澪音は私が受け身のようにしているのが不満らしかった。


でも、気持ちのままにキスしたら私はどうなってしまうのだろう……


そんな躊躇いも澪音の熱でいつの間にか溶かされて


「はっ……、んっ」


狂おしい気持ちでいっぱいになる。そうして長い長いキスをして、


「ずっとこのままがいい」


やっと満ち足りたように澪音が呟いた。


いつか私を解雇するくせに、無邪気にそんなことを言うなんて。ひどい、酷い人だと思う。


「あの……弾いてくれませんか?

作ってくれた曲」
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