君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
カーディガンを肩に掛けられて、手を通すとぶかぶかで袖が余った。これ……普段、澪音が着ている服なんだ。


「あったかい……澪音、ありがとうございます」


「別に。まだ寝ないなら、そんな格好でウロウロされると困る」


澪音が目をそらして、珍しく無愛想に言った。


「あの……本当に婚約破棄するつもりなんですか?」


「当然だ。かぐやと結婚はできない、したくないんだ」


「でも、仲良しですよね……」


「家族のような仲だよ。

言ったろ、姉さんのようなものだって。あの人は……兄さんの隣にいるべきだ。

あの二人は子供の頃から許嫁として育ってきて、それに仲の良い恋人同士だったんだよ」


「澪音……かぐやさんとお兄さんのために婚約破棄しようとしてるんですか?

私を使ってまで……」


「違うよ。自分のためだ。

もう良いだろ、この話は」


澪音は顔を背けて話を切った。


そのそっけない態度で、やっぱり二人の為なんだと確信する。


「優しいんですね、澪音」


「だから、違うって。余計な詮索してくるならもう寝るぞ。

ほら、こっちだ」


澪音に呼ばれておずおずとベッドに近寄り、広いベッドの隅に、澪音に背中を向けるように寝転んだ。


ドキドキするけど、この距離なら眠れるかもしれない。大きいベッドで良かった……


しかし明かりを消した澪音は、私の背中に寄り添うように体を寄せる。


「こっち向いて」


「む、無理です。もっと離れてくださいっ」
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