君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
自分を殴った父親にまで気を使って、執事の人に連絡するのを拒むなんて。
「そんなに優しすぎると、損するばかりですよ」
「損はしてないよ。
怪我のお陰で柚葉が心配してくれるから、却って儲けものだ」
澪音は、頬を冷やしていた私の手の甲に唇をつけた。いとおしそうに目を瞑る仕草に息がつまる。
「それじゃ冷やせませんよ……。
殴られるほどお父様に怒られるなんて、一体どんなことをしてきたんですか?」
「少し我を通しただけだ。
言いなりだと思っていた俺がしつこく反抗するから、父も驚いたんだろうな」
「我を通したって、婚約のことですか?
こんなになってまで、澪音はかぐや姫の恋愛を守ろうとしてるんですか?」
「かぐや姫って、かぐやの渾名?」
澪音はクスクスと笑った。
「いつか月に帰っちゃいそうな、神秘的な雰囲気の人だし……」
「見た目だけなら確かにそんな感じだけど、実際はえらく怖い人だよ。
いかにも実業家の娘って感じで胆も座ってる」
嬉しそうにかぐや姫のことを話す澪音。優しく細められる目を見ると、心が抉られるような気がする。
「婚約破棄については、確かにかぐやと兄さんの事もあるけど、今はもっと大きな目的のために動いてる。
婚約にしても、ビジネスのことにしても父の傀儡は御免だからね。」
伏し目がちに語る澪音は、昼間見たときと同じように遠い世界の存在に見えた。でも、そう思った途端に優しい眼差しが私の方に向けられて、
「柚葉の手、冷たくなってる。そのタオル持ってたせいか」
私の手からタオルを取りあげた澪音は、
「その手で、冷やして」
と左頬を向けた。色の白い肌がまだ痛々しく赤くなっている。
「それはちょっと恥ずかしいんですけど……」
「お願い。怪我に免じて少し甘えさせてよ」
そう言われると断れるはずもなく、手のひらをそっと頬に沿わせる。熱をもっているのか頬は少し熱い。
「そんなに優しすぎると、損するばかりですよ」
「損はしてないよ。
怪我のお陰で柚葉が心配してくれるから、却って儲けものだ」
澪音は、頬を冷やしていた私の手の甲に唇をつけた。いとおしそうに目を瞑る仕草に息がつまる。
「それじゃ冷やせませんよ……。
殴られるほどお父様に怒られるなんて、一体どんなことをしてきたんですか?」
「少し我を通しただけだ。
言いなりだと思っていた俺がしつこく反抗するから、父も驚いたんだろうな」
「我を通したって、婚約のことですか?
こんなになってまで、澪音はかぐや姫の恋愛を守ろうとしてるんですか?」
「かぐや姫って、かぐやの渾名?」
澪音はクスクスと笑った。
「いつか月に帰っちゃいそうな、神秘的な雰囲気の人だし……」
「見た目だけなら確かにそんな感じだけど、実際はえらく怖い人だよ。
いかにも実業家の娘って感じで胆も座ってる」
嬉しそうにかぐや姫のことを話す澪音。優しく細められる目を見ると、心が抉られるような気がする。
「婚約破棄については、確かにかぐやと兄さんの事もあるけど、今はもっと大きな目的のために動いてる。
婚約にしても、ビジネスのことにしても父の傀儡は御免だからね。」
伏し目がちに語る澪音は、昼間見たときと同じように遠い世界の存在に見えた。でも、そう思った途端に優しい眼差しが私の方に向けられて、
「柚葉の手、冷たくなってる。そのタオル持ってたせいか」
私の手からタオルを取りあげた澪音は、
「その手で、冷やして」
と左頬を向けた。色の白い肌がまだ痛々しく赤くなっている。
「それはちょっと恥ずかしいんですけど……」
「お願い。怪我に免じて少し甘えさせてよ」
そう言われると断れるはずもなく、手のひらをそっと頬に沿わせる。熱をもっているのか頬は少し熱い。