千秋先輩。その鈍感、本気ですか?
振り向くと、やたらキャーキャー騒がれている看板を持った美男子と……なんだろう、顔は綺麗なんだけどゴツいどこかで見たことある………


「あや?」
きょとん、とした顔の男の子がまっすぐこっちを見つめてくる。


「……お、お姉ちゃん……??」


「そうだよ〜。カツラ被っただけなんだからすぐ分かるでしょ?いいリアクションするなぁ」
あははと笑うお姉ちゃんはどう見ても可愛くて綺麗な男の子で、何人かのファンっぽい人が悲鳴をあげてる。


「でも良かった〜。お店の方来てくれても私達宣伝係だから会えないなぁって思ってたんだ。ねっ、千秋くん」


「あ、ああ……」
ぷいっ、とそっぽ向く大柄な人。


「千秋先輩!?!?」


「えっ、先輩!?」
帰ってきた愛海ちゃんも大声をあげる。


「気づいてなかったの?じゃーんっ!結構様になってるねぇ」
お姉ちゃんがこっちに千秋先輩を向かせる。


思わず唖然としてしまう。

なんかこう、……輝は明らかにお笑いっぽい雰囲気を纏ってたんだけど先輩は違う。なんていうか、要所要所女として負けてるなぁ、みたいな所もあって……


「…千秋先輩って、普段から女装されたりしてますか?」


「なんでだよ!」
愛海ちゃんの言葉に千秋先輩が真っ赤になって反論する。


「ふふ。それくらい確かに様になってるもんね」


「お2人が宣伝係になる理由、分かります」


「でも欲を言えばお姉ちゃんと先輩に接客してもらいたかったな〜」


「明日はいるよ〜。千秋くんも朝だけならいる!」


「本当!?」


「て、寺原!?あんまり言わないでくれよ…」



「あはは。なんかもう私、吹っ切れちゃって。男の子の格好も慣れてきちゃった」



「俺は絶対一生すかーととか慣れない…」



「それより2人はどうしてこんなとこに?ここってステージだから出店とかもうちょっと向こうだよね??あっ、お店来ようとしてくれたとか?」



「お店行こうと思ってたんですけど、ステージにちょっと用があったので!」

愛海ちゃんの言葉に先輩とお姉ちゃんがぴくっと反応する。


「……ミスコンに出る、とか?」




「へ?ミスコン??」

 


「……ミスコンは、出ない方がいいと思う…」




「お姉ちゃん…?」

 

「寺原落ち着け。ステージはミスコンだけじゃないんだから。違うよな、内田?」



「はい。ミスコンじゃないです」



「……そっ、か。ごめんね?なんか空気変にしちゃって」



「お姉ちゃんあの「寺原、そろそろ行くぞ」



「…そうだね。あや、愛海ちゃん、劇頑張ってね!絶対観に行くからね!」

手を振ってそそくさと2人は去ってしまった。
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