宵の朔に-主さまの気まぐれ-
その指の感触で朔が目を覚ました。

最初ぼんやりとしていたが、凶姫がぱっと手を離して顔を赤くしているのを見て、その手を差し伸べた。


「どうした…?」


「月…私…今、目が見えているの」


「…へえ、じゃあ俺の顔が見えてるんだな?どう?」


「どうって……いい男で驚いたわ」


「ふうん、抱かれてもいいって思った?」


「……そうね、そう思ったわ」


思いもよらない答えだったらしく朔の目が真ん丸になる。

目が開いた朔は少し切れ長の目ながらも大きく、目の中に星のように瞬く妖気でこの男がものすごく強いことが分かる。


「じゃあ…今抱いてもいい?」


「それは…駄目。私に少しだけ時間をちょうだい。月…もう一度確認しておくけれど、私を抱くと…あなた、死ぬわよ」


「死なないつもりだけど、例え死んだとしてもきっと本望だと思える。おいで」


差し伸べられた手を取ると床に引きずり込まれ、朔の熱い胸に手をあてた凶姫は朔がとても高揚しているのを知って声を上ずらせた。


「い、今は駄目よ。私この後心眼を使った反動で寝込んじゃうし、体力を持っていかれるから」


「俺が看病してやる。でも覚悟が決まって良かった。優しくした方がいい?それとも…」


「やめて!馬鹿!そんなの…あなたが決めればいいでしょ!」


――腕の中で顔を赤らめながらもがく凶姫に愛情が迸り、胸にあてられた手を心臓の上に置いてその激しく強い鼓動を感じさせた。


「聴いて。すごく嬉しい。抱かれてもいいって思ったらすぐに言って。俺を全身全霊で感じさせてやる」


いい?と聞かれて頷くと、唇が重なり合った。

至近距離の朔の美貌は涙が出るほど美しく、そんな男に求められる喜びは全身を駆け巡り、凶姫は朔の身体に腕を回して激しくも優しい口付けを受け入れた。
< 127 / 551 >

この作品をシェア

pagetop