宵の朔に-主さまの気まぐれ-
口付けだけでとろけそうになる。

はじめて凶姫が応えてくれたことで朔の欲もさらに募り、浴衣の帯に手をかけていつの間にか解いてしまっていた。


「ちょ…っ、駄目って言ってるでしょ…!?」


「見るだけ」


「見るだけって…!…どこまで…?」


「全部。遊郭で一度見てるし問題ないじゃないか」


にこにこ顔の朔に浴衣を剥ぎ取られてしまった凶姫は、腕を交差して胸を庇って朔に抗議された。


「それじゃ見えない」


「見えないようにしてるのよ!」


絶妙に身体をよじって上も下も見られないようにすると、朔は息をついて床に座ると凶姫を膝に乗せて正面から抱きしめた。


「じゃあせめて感触だけでも」


やわらかく大きくあたたかい胸の感触が朔の素肌の胸にも伝わった。

このまま抱いてしまいたいーー

だがそれでは独り善がりだし、凶姫の気持ちを完全に得ることはできないだろう。


「そろそろ俺に真名を明かしてもいいんじゃないか?」


「それは…あなたとそうなった時に教えるわ」



ーーなかなか焦らし上手の凶姫の背骨に沿って朔の指が伝うとわななくように身体が痙攣した。

その表情ーー美しく色っぽく、凶姫の頰に雨のように口付けをした。


「俺今大変なことになってるんだけど。どうすればいい?」


「!し、知らないわよ!私だって大変なんだから!」


「や、俺の方が大変」


「私の方よ!」


妙な言い争いをして笑い合うと、朔の視線が胸に落ちた。


「ちょっとだけ触りたい。駄目?」


「駄目よ、約束したでしょ。男に二言はないんでしょ」


朔もなかなか辛抱強い方だがーー

太ももに手を這わせて色っぽい表情を頂くと、なんとかそれで自分自身を納得させて、浴衣を着せてやった。
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