宵の朔に-主さまの気まぐれ-
鳥を甘辛く炊いたものを作って柚葉に持って行かせた息吹は、機を見計らって朔を昔使っていた部屋…つまり今は朔の自室に連れ込んだ。
「母様…どうしたんですか?」
「ねえ朔ちゃん。朔ちゃんは姫ちゃんのことが好きなんでしょ?」
「またその話ですか。母様、俺は…」
「朔ちゃんが認めなくても私には分かるんです。母親の勘なんです。朔ちゃんは姫ちゃんのことが好き。誰と居る時よりも姫ちゃんと一緒にいる時の朔ちゃんは安らいでると思うから。私には嘘つかないでちゃんと言って」
――逃げ続けていた質問に答えなければならない。
母親にとことん弱い朔は大きく息をついて、ふわりと笑った。
「…そうですね。好きなんだと思います。というよりも、好きです」
「やっぱり!お嫁さんになってもらえそう?」
「なかなか手強くて…どうでしょうか。まだ時間がかかりそうですね」
「進展してないの?なんにも?父様の子なのに?」
父の十六夜は母と出会うまでは女癖が悪く、朔は苦笑して息吹の大きな目を見つめた。
「進展してないことはないですけど、ただただ手強い。でも大丈夫ですよ、俺は父様の子ですから」
「やだ朔ちゃんったら!自信満々!」
この明るく朗らかな母には逆らえない。
つい本音を吐露してしまった朔は、盲目の凶姫を嫁として周囲が認めるかどうかをさりげなく息吹に問うた。
「凶姫は盲目です。もし妻として不足ということなら…」
「ううん、それはないよ。私だって人だけど反対なんてされなかったから。朔ちゃん、なんにも気にしなくていいからね。もし反対されたとしても母様が味方してあげるから」
「ははっ、それは心強い」
――妻。
口に出してみてはじめて意識した。
凶姫が応えてくれる日は来るのだろうか?
日増しに募るこの想いに――
「母様…どうしたんですか?」
「ねえ朔ちゃん。朔ちゃんは姫ちゃんのことが好きなんでしょ?」
「またその話ですか。母様、俺は…」
「朔ちゃんが認めなくても私には分かるんです。母親の勘なんです。朔ちゃんは姫ちゃんのことが好き。誰と居る時よりも姫ちゃんと一緒にいる時の朔ちゃんは安らいでると思うから。私には嘘つかないでちゃんと言って」
――逃げ続けていた質問に答えなければならない。
母親にとことん弱い朔は大きく息をついて、ふわりと笑った。
「…そうですね。好きなんだと思います。というよりも、好きです」
「やっぱり!お嫁さんになってもらえそう?」
「なかなか手強くて…どうでしょうか。まだ時間がかかりそうですね」
「進展してないの?なんにも?父様の子なのに?」
父の十六夜は母と出会うまでは女癖が悪く、朔は苦笑して息吹の大きな目を見つめた。
「進展してないことはないですけど、ただただ手強い。でも大丈夫ですよ、俺は父様の子ですから」
「やだ朔ちゃんったら!自信満々!」
この明るく朗らかな母には逆らえない。
つい本音を吐露してしまった朔は、盲目の凶姫を嫁として周囲が認めるかどうかをさりげなく息吹に問うた。
「凶姫は盲目です。もし妻として不足ということなら…」
「ううん、それはないよ。私だって人だけど反対なんてされなかったから。朔ちゃん、なんにも気にしなくていいからね。もし反対されたとしても母様が味方してあげるから」
「ははっ、それは心強い」
――妻。
口に出してみてはじめて意識した。
凶姫が応えてくれる日は来るのだろうか?
日増しに募るこの想いに――